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インスタントコーヒーの物理

僕はコーヒーファンなのだけど、このごろ飲むコーヒーの量が減った気がする。むやみにカフェインを取りすぎるのもよくないし、インスタントコーヒーを頻繁に飲むよりも、ドリップコーヒーをたまに飲む方が満足度が高い気がしてきたからだ。
それで忘れていたのだけど、インスタントコーヒーを作るときにちょっとしたことに気付いて以来、疑問を抱えていたのだった。マグカップに粉コーヒーをいれ、お湯を注いで、スプーンでかき混ぜるとき、スプーンでカップの底を突いて出る音についての疑問だ。この音が、かき混ぜた直後から経時的に変化する。はじめはコンコン、コツコツとくぐもった低い音に聞こえるのだが、それが時間の経つうちにカッカッカッと高い音に変化していく。どうも気のせいというレベルを超えていたので、何か理由があるのだろうかと疑問に思っていたのだ。そのうち自宅に測定器を準備して、測定をしたいとも思っていたところだった…
この疑問が、思いがけず解決してしまった。書店で立ち読みしていた本に、この疑問に答える論文についての記事があったのだ!

ヘンな論文

ヘンな論文


取り上げられていた論文は、高校の教員が生徒の疑問に答える形で行った研究についてのものらしい。この論文は物理教育のjournal(どこだったかは失念)に掲載されたらしいが、世界はもっと広かった。オリジナルの研究が1982年に既になされていたらしく、今ではWikipedia英語版)に記事までできていた。この現象、どうやらホットチョコレート効果というらしい。
Hot chocolate effect - Wikipedia, the free encyclopedia

The hot chocolate effect, also known as the allassonic effect, is a phenomenon of wave mechanics first documented in 1982 by Frank Crawford, where the pitch heard from tapping a cup of hot liquid rises after the addition of a soluble powder.

上記のWikipedia記事には動画へのリンクもあった。www.youtube.com
僕がコーヒーで聞いたのもこれにそっくりだ。


それで興味は、この現象がなぜ起こるのかというところである。どうやらこれは音の伝播速度の変化に起因するものとして説明されるらしい。ココアやコーヒーの粉をお湯やミルクに入れてかき混ぜると、ドリンクの中に細かな気泡がまぜこまれる。このために音が低くなるというのだ。時間がたつにつれてこの気泡は空気中に逃げていき、一様な液体状態が回復されてくる。音の速さと音の高さは密接に関係している(ヘリウムガスを吸うと声が高くなる現象)ので、これが音の高さの変化として観測される。こういうわけである。
ちょうど強いばねと弱いばねを直列につないだときのように、少しでも液体に気泡が混ざると、劇的にドリンクの体積弾性率が変化する。従って気泡の量に対する音程の高さの変化は大きく、細かな気泡が混ざったりつぶれたりするだけなのに、聞いてわかるほどの音程の変化が起こるのだと思う。