スピンアイス

ニコニコ見ながら訳した。やっつけだけど、物理工学科の志望動機書に書いてしまったし、面接で聞かれるかもしれないから載せてみる。
Spin ice

スピンアイスとは、その物質において磁気モーメントが氷におけるプロトンの振る舞いと似たふるまいをするような物質のことである。
1935年、ライナス・ポーリングは氷の構造が絶対零度においても存在するような自由度を示すことに気づいた。絶対零度に冷却したところで、氷は残留エントロピーを示すということである。これは氷の構造が、4つの水素原子に隣接する酸素原子を有することに起因する。それぞれの酸素原子について、4つの水素原子のうちの2つの水素原子が近く、2つはもっと遠い。ポーリングが気付いたのは、このような"two-in two-out"ルールは一意ではなく、そのために氷のエントロピーはノンゼロになるということであった。

純水の氷を作るのはとても難しいことであったが、ポーリングの発見は実験により確かめられた。

スピンアイスはイオンの正四面体で構成される。それぞれのイオンはノンゼロのスピンをもっていて、two-in two-outルールのようなものを満たさなくてはならない。それは、近接するイオンの相互作用のためである。スピンアイス物質はそのために、氷のような残留エントロピーを示す。しかし、スピンアイスに用いられている材質によっては、一般に氷よりもずっと簡単にスピンアイスの結晶を作り出すことができる。加えて、スピンアイス中のスピンと磁場の相互作用のために、スピンアイス物質は水よりも残留エントロピーを調べるのには良い物質である。

フィリップ・アンダーソンは1956年においてすでに、corner-sharedのパイロクロア格子上におけるフラストレーションのあるイジング反強磁性とポーリングの氷の問題とのつながりに気づいていた。スピンアイスとなる実際の物質はごく最近になって発見されたばかりである。初めてスピンアイスと認められた物質はHo2Ti2O7, Dy2Ti2O7そしてHo2Sn2O7といったパイロクロアであった。ごく最近になってDy2Sn2O7がスピンアイスであるという確固たる証拠が見出された。

スピンアイス物質は極低温においても磁気を帯びたスピンがバラバラであることによって特徴づけられる。AC磁気感受率測定により、比熱が最大になる温度以下では、磁気モーメント凍結の証拠が見つかった。
スピンアイスは幾何的にフラストレーションのある磁気系である。通常フラストレーションは反強磁性相互作用をもつ磁気モーメントの、三角または正四面体と関係づけられるが、スピンアイスはフラストレーションのある強磁性体である。強磁性的な相互作用をスピンアイスにおいて作り出すのは、四面体の内外に磁気モーメントを向けようとする、結晶場の局所的な性質である。面白いことに、フラストレーションと、したがって"two-in two-out"のスピンの向きを作り出し、スピンアイスの現象へ導くのは、最近接の相互作用ではなく長距離双極子相互作用である。

スピンアイスは確かに、すごく面白そうだ。基底状態の縮退はどれくらい強く残るのだろう。実際の物質で。