It were a dark and stormy night; and t'rain came down in loomps. Cap'n said 'Tell us tale', and tale it ran as follows: 'It were a dark and stormy night; and t'rain...'

ザイマン「現代量子論の基礎」の摂動論の章の頭に載っている言葉である.非常に面白い文章で,物理をやっている人ならすぐにピンと来るのではないだろうか.この文章が言っているのはself-consistentencyのことだ.
散乱による効果は自己エネルギー \Sigmaで与えられるが,散乱の効果はself-consistentな方程式
 \Sigma =\sum_{\alpha}\frac{1}{\epsilon - E_{\alpha} -\Sigma}
で計算される.まさに冒頭の文章と同じく入れ子構造.田崎さんの教科書を読んだ人なら,イジングモデルを解くときにセルフコンシステントな場ということで扱ったはず.


物理の本でこんなふうに,章のはじめに何かしらの文章が載っている本は案外多い.Messiahの量子力学の教科書にも,なにやら文学作品が引用されている.こちらはフランス語なので(メシアの原著はフランス語なのだ.英訳版を持っているのだけど,この部分だけフラ語のまま)ちょいと訳してみよう:
第一部"THE FORMALIZM AND ITS INTERPRETATION"

Il lui proposa de faire le voyage de Copenhague, et lui en facilita les moyens (Candide)

再帰動詞って言うんだっけ?うーん,フランス語ってこんなに難しかったかな.いま辞書が手元にない上に文法がわからないので,テケトーにやくすと「彼はコペンハーゲンへの旅を考え,お金の工面した」となる.この部のタイトルにあるように,解釈を扱うのだから,おそらくコペンハーゲン解釈のことを言っているんだろう.なんだかひどく安直な気もするが
2部以降は明日,辞書と文法書を見ながら訳そう.

話は変わるけど,メシア量子力学は絶賛してお勧めできる本のひとつ.日本語訳が絶版になっているようだが,古本漁ってまで日本語版なんか買う必要がない.Dover出版から,ペーパーバックではあるものの1000ページ超で2500円という格安価格で出ている.この値段で世界的に知られた十分に信頼のある教科書が手に入るのだ.買わない手はないだろう.英語が読めないなら勉強しろばか.それでも読めなければ枕にもなる.この本は物理の学生なら持っていて然るべきだし絶対に後悔はしない.基本的に知りたいことはみんな書いてある.とりあえずRacah公式やウィグナーの3j記号についてある量子力学の本は,俺は知らない.*1

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)

Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)


ザイマン現代量子論の基礎

ザイマン現代量子論の基礎

*1:丁寧すぎて冗長と感じる人もいるとかなんとか.確かにランダウが好きな人はメシア合わないかもしれないけど,数学的にランダウよりもしっかり書いてる.というかランダウの方は案外数学的に適当.