シュレディンガーの猫

シュレディンガーの猫は色々な物理学上の概念の中で,比較的一般の人への浸透度が高いもののように思える。ただ,量子力学は誤解されやすくて,猫の話も結構デタラメな自分解釈がされているように思う。自分解釈がはびこる理由の一つが,用語の用法のためというのはありそうな話と思う。

Wikipediaの解説に,次のような一文がある。

このような重なりあった状態を認識することはない。(強調原文ママ)

重ねあわせは量子力学の本質的な部分で,数学的には状態の線形結合という厳密な意味がある。この点において,

A「猫は生きているか死んでいるかわからない」

B「猫は生きている状態と死んでいる状態の重ねあわせだ」

という2つの主張ははっきりと区別される。重ねあわせはミクロ世界の現象を非常によく記述するが,ミクロな現象(それこそ原子核の崩壊とか…)が装置によってマクロな対象(猫)に拡大された際に,我々は「シュレ猫」のような生死重ねあわせの奇妙な状態を考えなくてはならないだろう。というのがこの思考実験の主張。

けっきょく,初歩の誤解はこのあたりの用語の無理解から来ているように思う。

日常用語に同じ音のものがあるにしても,科学で用いられる用語には特別な意味があることが多い。用語の定義に敏感になると,デタラメを言わないですむようになるかもしれない。

量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ)

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