最近聞いた話なのであるが、量子情報をやっている友人がgeometrical phaseの論文を発表していたらしい。qubitの操作系実装を視野に入れているのだろうか。今度会った時にでも、少し話を聞いてみたい。
geometrical phaseというのはつまりこういうことだ。あるパラメータの集合Rを含むハミルトニアンH(R)が、ある時間TをかけてR空間を一周し、R空間において経路Cを描くとする。いま、Tが系に固有の時間よりも十分に長いと仮定すれば、断熱定理によりあるインデックスnで指定される固有状態は、他の固有状態へ飛ぶことはない。CにそってRが一周すると、始状態と終状態におけるハミルトニアンは同じものになり、それぞれの時刻における固有状態は位相の自由度しかない。しかしこの位相差は干渉などにより実験的に観測可能であり、ゲージ不変性を満たす必要がある。断熱近似が成り立つ場合にこの位相がゲージ不変になるということは、Berryによって示されている*1。縮退がない場合というのは簡単で、Berry曲率なるゲージ不変量を導入できる。局所的なゲージ変換に対しても、Berryの曲率は不変になるようにうまく定義されているわけだ。SU(2)ゲージ変換とか、SU(3)ゲージ変換についても同様のことが言えるのだろうか、という助教の指摘があった。行列を扱うので複雑になるが可ではある、というのが結論らしい。原子核とかやってる人なら、こういうのを面白いと思うのだろうか。

*1:Proc. R. Soc, Lond. A 392, 45 (1984)。ベリーのHPより取得可能