「アクチュアリー座談会 (1) いまアクチュアリーに求められていること」がおもしろい

数学セミナーの記事が目に止まった。
数学セミナー2010年1月号 | 数学セミナー詳細情報
談話形式の記事で、詳しい人からすると参加している四人の微妙な立位置がわかるのだけど、僕はそういった立位置や意識のあり方の違いがよう分からないので、残念だけどそこら辺の情報は塗りつぶしてしまおう。


本対談は保険業務に携わる、または過去に携わっていた四人のアクチュアリーによるものである。

アクチュアリーとファイナンスの関係

  • ファイナンス分野で確率論が用いれらしたのは1987年くらいのことで、金融機関はアクチュアリーに引き抜きをかけていた
  • リーマン・ショックの原因の一端はファイナンス分野における数学系出身者の暴走にあるのでは。この分野にアクチュアリーがもっと進出するべきでは
  • ファイナンスでは市場原理を前提としている、つまり商品の価格は無裁定に決定するのに対し、アクチュアリーはそのような市場仮説が何もない。
  • ファイナンスの分野で積極的に取り入れられる数学上の概念を、アクチュアリーの実務にどの程度取り入れていけるか
    • アクチュアリーは実務家であり、学問サイドから発展したファイナンスとはアプローチが異なる。たとえばアクチュアリーでは「均衡市場」、「完備市場」、「無裁定」のような公理系に近い概念を導入しない
  • 公理系に近い市場原理を仮定しないぶん、アクチュアリーには倫理が求められる
  • 「実務から出発して学問の方へ向かうアクチュアリー、学問から出発して実務へ向かうファイナンスという役割分担の必要性を感じています」

これからのアクチュアリーに必要なもの

  • 国際会計基準書など、英語で書かれた書面を読める英語力。海外の現地法人の債務評価や監査人との協議でも英語のやりとりが多くなっている
  • これからはリスク管理の分野で活躍できるのでは。いわゆる第4世代
  • 「伝統的な生保アクチュアリーが第1世代、危険理論を駆使する損保アクチュアリーが第2世代、投資理論を扱う第3世代のアクチュアリー
  • (リスク管理を理解するのに、どんな数学が一番重要かという問に)確率統計、確率過程、ブラウン運動

その他の話題

  • アカデミズム(数学分野)と実務(アクチュアリー)の意識の乖離。
    • 実務サイドとして、開発された数学上のテクニックを手当たりしだいに使いたいが、数学の人は完成品を目指してなかなか発表しない
    • アカデミズムサイドからの歩み寄りも求められているのでは?
  • 実務で適用する数学理論の"怖さ"を知る必要がある


(細かいテクニカルな話題が全くわからなかったので、一切省いてしまいました)

興味ある人には非常におもしろい対談だったと思いました。アクチュアリーとファイナンスの意識の違いのあたりが興味深かった。上の箇条書きはすべての発言についてまとめたわけじゃないので、興味ある人はぜひ数学セミナー2010年1月号を。