理系の学科で、量子力学を勉強しない人がいるのはおかしい気がする。高校で学ぶ原子の描像というのは、正電荷をもった原子核の周りを、負電荷をもった電子が飛び回っている系だった。しかしこの描像には実は無理がある。電子の円運動は加速度運動であるから、電子は制動放射により外部に電磁波を放出する。エネルギーを失った粒子は、いずれつぶれてしまう。実在の水素原子はつぶれたりしないから、つまりこの描像は正しくない。
ニュートン力学(とマクスウェル方程式)が、原子のスケールで成立しているとした結果、このような欠陥が現れたのであった。これはつまり、古典理論の破綻を意味する。物質は究極的に、正電荷負電荷をもった粒子からなっていると教えていながら、古典系内部で破綻をきたすのが高校物理だったのだー。理科系のクラスで一通りの物理を学んだ高校生ならば、量子力学を理解することができるだろうか。もし可能ならば、理系の学生には量子力学を知ってほしいと思うし、そうするべきじゃないのか。
高校生向けに、あるいは量子力学を勉強したことのない大学生向けに簡単に量子力学を解説してみたいと思うのだけど、どのような順で解説したらよいだろう。


量子力学の導入にはいくつか方法がある。自分の場合、化学の授業で初めて触れたシュレディンガー方程式が最初だったように思う。だけど、量子力学がどのような性格をもったものなのか、それを知るためにはブラケット形式だろう。いきなりJ.J.Sakuraiを読むのも、それはそれでよいと思う。