朝家を出ると、見慣れた山が頂上付近から黒煙を吹いていた。不審に思って歩きながら見ているうちにそれが噴火であると気づいた。土砂を巻き上げ、煙はもうもうと高く昇っていく。この分だと自分のいる場所まで土砂が届くのも時間の問題だと思った。それにしても、火山活動がこんなにも活発化していたとは聞いていなかった。気象庁はちゃんと監視をしていたのか?
とりあえず大学へ向かうのはよして避難場所の小中学校へ向かうべきと判断した。噴煙の害を考えると屋内の方がいいかもしれない。山頂付近からはいまだに煙が上がり続けるが、大きめの石はそろそろこちらに届く頃かもしれない。僕は、持っていた枕を頭にのせて急いで移動を続けた。途中、小学生の女の子が僕の真似をして頭に枕をのせていた。まだなにも飛来しないが、これからかもしれない。
早足であるいたのですぐに避難場所の小学校にたどり着く。もうあまり時間もないだろう。はやく屋根の下へ、と思い、渡り廊下の下へ避難した。
ここなら降ってくる土砂も避けられるはずだ。安心して見回すと小学校の頃の友人が現れた。なつかしがっている暇はなかった。もうすぐそこまで噴煙が届いているはずであった。
制止する僕を降りきり彼は外に様子を見に行った。僕も、彼について外へ出て驚く。
朝の太陽が噴煙に閉ざされて真っ暗だった。砂避けの黒い傘越しに、太陽黄色く見えた。気温は、ほとんど驚くべき速度で低下し始めた。「世界の三分の一の人口しか生き残らない」と友人が言う。妙に納得した。
太陽かなくても、人間は経済活動を続けられるだろうか、少なくとも恐竜のように容易く絶滅はしまい、と思うが内心は不安であった。
ふと、再び顔を外に向けるとなんと日が射している。なんと、噴火の規模は小さく、噴煙は消散してしまったように見えた。川べりの緑は美しく、人々はなんの不思議もなく通勤に、通学に急いでいた。「17秒だけか」と言っている友人の声。そうか、17秒か。納得する自分。
よく「無くして重要さに気づく」なんてことがあるが、今度の噴火は太陽の重要さを教えてくれたのかもな、手軽に。などと思った。
帰り際、友人と昔の話をした。一緒に歩いている途中で、目が覚めた。