春は考える季節

春先の風の強い日は、なぜか不安交じりのうきうきした変な気分になる。
春は全部が理路整然としている冬から、カオス的な激しい夏への変化の季節であって、その激しさの予感が自分を不安にするのだと、勝手に納得した。


先日早稲田大学の構内を歩いたが、ソメイヨシノっぽい桜がもう咲き始めていた。自分の大学の桜のつぼみはまだ固そうだったけど。桜は桜で、自分を不安にさせる。この不安の正体は、まだよくわかっていない。坂口安吾の「桜の森の満開の下」の冒頭で、赤子を亡くした母親が桜の下で狂ってしまうという描写があるのだが、心情としてはそれに近い気がする。桜はなんだか恐ろしい。
そういえば、自分の入学の年、一番初めに受けた授業は文型の教養科目で、文学について扱った。初めの授業で先生が「文学の知識は人と話してるうちにさりげなく引用をして、カッコつけるのに必要だ」と冗談をお言いになって「桜の樹の下には」の冒頭部分を黒板に書き出したのをよく覚えている。それが、自分にとっては衝撃だった。その先生の姿が、とんでもなくかっこよく映ったからだ。(その先生に感化されて、「桜の樹の下には」は暗記してしまった。5,6ページのごく短い文章だった。)


とりとめのない文章だけど、とりあえず今日はこれで。桜の季節になればまた、桜の話を書くんだろう。多分。