電気分極3

三つ目の分極の定義を与えます.これが現在主流になっている分極の考え方になっているのですが,そのベースは電磁気学の基本的な式
 \nabla \cdot \b{P} = -\rho
です.右辺は分極電荷を表しています.この式は電位の多極子展開から出てきますので,もし気になったらジャクソンの電磁気学の教科書でも開いてください.さて,この式と連続の式
 \frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla \cdot \b{j}=0
を用いると,
 \nabla \cdot (\frac{\partial \b{P}}{\partial t}-\b{j})=0
を得ます.ここから,発散がゼロになる部分の不定性を除いて分極Pに対する表式, \Delta P_{\alpha}=\int {\rm d}t j_{\alpha}を得ることができます.これまでにも述べてきたように,この積分によって求まるのは始状態と終状態での分極の差だけです.そしてこの不定性は,系の周期性に由来しているのでした.
さて、ここに現れた電流jについて考えましょう。今考えているのは系に対してある操作を行った結果、系の分極が変化するので、その分極の変化分について計算しよう、ということです。系に与える変化は外場でもいいですし、純粋に力学的な力(ピエゾ効果)でもいいわけです。ただし、系の変化の途中で系が金属的になってしまうようなものはだめです。実はこれはバンドの形状に関する、トポロジカルな性質と関係しています。


こいつを扱うにはベリー曲率に関する知識とpumpingのメカニズムの理解が必要になります。というわけで次回はこれを準備していきましょう。