世界は分けてもわからない

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)


読了しました。福岡氏の文章を読むといつも感じることなのだけど、構成力がやはりすごい。大きく遠回りな航路をとりながらもちゃんと目的点にたどり着く遊覧航行のような、すごく優雅な読み方ができる本。特に面白いと感じたのは後半に現れたラッカーと、当時弱冠24歳の大学院生スペクターを中心に巻き起こったワールブルク効果をめぐる一連のドラマだ。そこに存在しないはずの"天空の城"を見てしまったラッカーは実際には正解に肉薄していた。それにもかかわらず彼らが道を誤ったのは脳の偉大な補正「おせっかいな補正回路」のおかげともみられる。ここら辺のトピック同士の絡ませ方が、なんというかすごくうまいのだよね。
もちろん他にも本全体に、見どころがちりばめられている。しかしそのどのエピソードも結局のところ「世界は分けてもわからない」っつうテーゼに対する助走でしかないのだ。よくもまあ、これほど文章をうまく配置・構成できるものだと、俺なんかは感心するほかないのよねー