思い出話的になるが,音波が断熱的なサイクル過程であるというのは初めて知った時は割とビビった。だって熱い空気と冷たい空気が触れ合えば混ざり合って温い空気になるように思えるじゃん。結局,時間的なスケールが大事なのであって,一秒間に20〜2万回のサイクルを繰り返すような過程では熱緩和時間は問題にならないくらい大きい。*1
一方で,先の音速の導出では等エントロピーサイクルを仮定していた。これは断熱的というだけではなく,準静的であることを意味する*2。逆に言えば圧力的な平衡は,音波による圧力サイクルに追随しているからだろう。ただしマクスウェル分布が示すように,平衡状態の空気分子速度は中心値の周りに広がって分布している。したがって音響サイクルは厳密には等エントロピー的ではなくなり,周波数が高くなれば高くなるほどに媒質による吸収のレートは上がるだろう。そのうち計算してみる。
ものの本を眺めれば,サイクル中における温度的な緩和と,それによるエントロピー生成を取り入れた補正波動方程式などが取り上げられていたりする。特に物性値を測定するような精密測定では,こういうのが効いてくるとか。

*1:小学校で寒冷前線が冷たい空気と暖かい空気の接面が地面と交わる線だと聞いて腑に落ちなかったのも同じ。

*2:断熱的なだけだとサイクルをつくらない