最近、人に物性の面白さを伝えてみたいとよく思う。
振り返ると物性系の現象で今まで学んだ中もっとも面白いと感じたことは、学生実験でやった超流動だったかもしれない。超流動体はある種の音波がエントロピー輸送を媒介し、そのために普通の意味でいう熱伝導率は無限大の値をもつ。それゆえ何と、沸騰という現象がおこらない。断熱容器に入れられた液体ヘリウムがあるところまで冷却された瞬間に沸騰が止むのだ。話には聞いていたが、実際に目にしたときは感動した。*1この関連で言えば当然超伝導もウケるだろう。
物性ではないかもしれないが、光学におけるブリュースター角の測定実験も印象に残っている。これは、反射光が光の進行面に平行な変更状態にあるという現象だ。ファインマンのエッセイにも載っていたのを覚えている。面白いと感じたのは、この現象を利用したサングラス*2とか、カメラ用のフィルター*3とかに利用されていることだ。やはり、目に見える応用は面白いのだ。
少しマニアックになるが、表面電子の光電子分光によるバンド図なんかもビジュアル的にアピールしてくる。が、・・・こりゃあコアすぎるな。


もちろん、もっと”地味な”現象も含めれば面白いことはたくさんあるのだが、実験して面白さが目で見えて面白いというのとはまた別の面白さなのでここでは却下。ええと、あとはねー量子ホール効果とかAB効果とか、なんとか面白く見せられないかな。物理系の学部生だったら何とかなるかもしれない。それでも一般化とか他の現象との対応とか、そういう物理の面白さ抜きにすると面白さも半減だとおもう。残念だ。
ところで、先日twitterにてこんなポストが物性クラスタを駆け巡った。

「物性系男子を引っ掛けるのって凄い簡単。『ベリー位相ってどういうこと?』って聞くだけ。そうすると勝手にしゃべりだすから適当にあいづちうってればいいだけ。マジ楽勝」

http://twitter.com/thepeace75/status/16550175564
ここでベリー位相なあたり、いいところ突いてると思う。しかしこれを「いいところ」だと思ってしまうこと自体、世間からかけ離れてしまっていることの証拠なのだろうなあ。

*1:大学院に入り、授業で超流動とBECとの関係を知ることになったが簡単ではないらしいことを知った。理解がというよりもメカニズムがいくつもの要因によっているためにであるが。例えば理想Boseガスでは超流動は起こらない。これは比熱の温度依存性などを見ても明らかだ。

*2:水面での光の反射を抑えて水中の魚を見やすくする

*3:空気分子に散乱された偏光方向を持つ光を遮断するフィルターをつけることで、空の青を深く見せられる