ミャンマーの柳生一族

大学院の書類、何であんなに住所を書かせるかねえ。面倒。こりゃエントリーシート何十枚も書いたら愚痴も2行や3行じゃすまないぞ・・・w


ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)


著者はキナ臭い地域ばかり訪れている,元探検部所属のジャーナリスト(小説家?).今回の舞台はミャンマーである.タイトルにある柳生一族というのは徳川による江戸幕府におけるお目付け役の一族の名前である.どうしてここで江戸幕府が現れるかというと,著者が現ミャンマーの体制をお話を通して江戸幕府になぞらえているから.
ご存じのとおりミャンマーは軍による独裁制が敷かれている.「ご存じのとおり」と言ったが俺も実はよく知らんかった.なんせこの本を図書館で手にとる時思った理由が「ああ,ミャンマー国民に慕われていた誰かが去年亡くなって,盛大にお葬式をしていたな.地理の勉強にも良さそうだから借りてみよう」というものであった.後になってこれはミャンマーではなくてフィリピンのアキノ元大統領であると気づいた.ひどい勘違いであるのは認めるが,どちらも相当にキナ臭い地域なので仕方がない.自己弁護ですとも.


さてこの本,著者が先輩であるところの船戸与一氏とともにミャンマーの道中を描いたものであるが,現地で政府から遣わされたいわば監視役のガイドとともに行動を共にする.軍事独裁政権のミャンマーである.この「おつきのもの」がどのようなヤツなのかもわからず,はじめのうちこそ警戒をしていたものの,道中を共にしていくにつれ親近感が生まれてくるのだ.これがいかにも人間臭くてよい.最後はお互いをからかいあうような冗談までとばせるようになっている.武田鉄矢の映画を見てともに感動の涙を流したりする.こういうのすげー好き.人と人とが支えあって,というのではないけど人同士の付き合いということで、お互いに役職を忘れて付き合ううち、そのガイドはポロリと本音を漏らすシーンがある.アウン・サン・スーチーの援助はミャンマーの安定には不可欠だと口を滑らせるのだ.軍の関係者がこんなことを漏らしているのがばれたらただじゃ済まないかもしれないのに,だ.本音はそうなんだろうな。
それからもうひとつ面白かったことはミャンマーに日本製の車や電化製品があるだけではなく,日本の俳優も向こうで非常に人気があるということだ.ソニチバ(ソニー千葉)こと千葉真一真田広之が広く知られているらしい.
やっぱり人間なんてもともと,それぞれ差なんてないんだろう.にもかかわらずそれを曲げてしまうほどの"国"とか"歴史"とかってどういうものなのだろうか.最近の興味かもしれない.
本の最後で,軍情報部が大量粛清されたというニュースを著者が受け,道中を共にしたガイドたちの身を案じたところでこのお話はおしまい.