揺動散逸定理の導出について

最近ザゴスキンを読んでいて揺動散逸定理について少し理解が深まったのでメモ。 時間相関と応答関数とを関係づける、揺動散逸定理は実用上重要なので、触ったことがある人は多いと思う。けれども敷居が高いのか、導出についてはあまり知られていないように思う。でも実は線形応答理論さえ認めてしまえば実は簡単に導出できる。 大胆に簡略化してしまえばこんな感じになる。感受率 \chiは久保公式から \langle AB-BA\rangleとなり、時間相関関数 C \langle AB+BA\rangleとなる。実は、 \langle BA\rangle = e^{\beta \hbar\omega}\langle AB\rangleなので(KMS恒等式)、 \chi = (1-e^{\beta\hbar\omega})/(1+e^{\beta\hbar\omega})Cになる。これでほぼ証明は完了。本当はcausalityについてきちんと考える必要があるけど、その辺はとりあえず無視している。こうして形式的に整理してみると揺動散逸定理を覚えておくのに役立つ。 ただこれは厳密な意味での揺動散逸定理の「証明」とはならないので注意が必要。中嶋貞雄先生が「現状の線形応答理論は,揺動・散逸定理が成立するように構築されている」と言っているように、線形応答理論には多くの仮定が含まれている。(https://www.jps.or.jp/books/50thkinen/50th_10/001.html