量子のエネルギー

量子力学について考えてみると、わかったつもりで全く分かっていなかったことに気付く。
たとえば、固有値Eに対応するエネルギー固有状態|ψ>と、固有値E'に対応する別のエネルギー固有状態|ψ'>の重ねあわせで表される系|Ψ> = |ψ>+|ψ'>のエネルギーはどうなるんだろう?というのは簡単なように思えて、考えてみると、よくわからない。

状態の物理量についてよく教科書に書いてあるのは、アンサンブル平均である。つまりたくさんのΨのコピーを持ってきて測定を行ったとき、そのアンサンブル平均がハミルトニアンの平均値になっているというわけである。具体的には冒頭の問題だと、(E + E')/2となるのだけど、この値は具体的に物理的意味を持っているだろうか?
確かめるための一つの思考実験を考えてみる。よく知られているようにエネルギーは保存量である。だから、もし本当にΨがエネルギー(E+E')/2を持っているのなら、測定で得られるエネルギーの値εに対して、差分(E+E')/2 - εが何らかの形で放出されるだろう。*1しかし、このシナリオは正しい気がしない。
エネルギーは保存量であるがゆえに、いわゆる純粋状態としてのΨは存在しないかもしれない。というのは言い方が悪いな。Ψに対するどのような測定においてもψとψ'の干渉項は現れずに、固有値Eの状態と、E'の状態の混合状態としてΨが記述できることも考えられる。こう考えると、ΨのエネルギーはEまたはE'のどちらか決まった値、ということになる。この系に対して測定を行えば、EかE'が出てきて系のもとの状態がはっきりするだろう。これはいわゆる超選択則の例になっている気がする。
しかし測定によっては、干渉項が現れて純粋状態になるかもしれない。たとえば電磁波を照射して準位間の遷移スペクトルを見るような実験では、ハミルトニアンは非対角となりψとψ'は互いに移り合う(ラビ振動)。この過程では振動数がエネルギー差に依存する干渉項が現れるので、これはもう混合状態とは言えない。
色々考えてみたが、問題意識がまだはっきりとはしていないので、きれいな形では言えなかった。アウトプットが思考の助けになるかもと思い、書き殴ってみた次第。

*1:何か具体的な例があるだろうか?例えば混成軌道などでこういう系が自然にできていたりしないだろうか?