デモンストレーションの重要さを再認識した話

http://www.daikagaku.jp/content/vol021/
NHKの大科学実験 -大科学支援- NHK Educational Corp.という番組が面白い。コンテンツの一部は上記の公式webページでも配信されている。
番組のコンセプトは「やってみなくちゃわからない」で、誰もが知っていながら実際に試したことはないような実験を行う。それぞれのテーマは小学生でも知っているような大したことないものではあるが「見せ方」がうまい。CGなどは使わないが実験の趣旨は明快で、大人が見ても面白い番組だ。
具体的に内容をみてみよう。冒頭に挙げた動画は「救出!てこ大作戦」というテーマである。てこの実験に過ぎないのであるが、人ひとりの重さで7トンのバスを持ち上げるという画にインパクトがあり、ちゃんと番組として成立している*1。他にも例えば実験01の「音の速さを見てみよう」なんかは特にお気に入りだ*2。これは人を一直線に並べて片方の端で音を発し、聞こえた人に合図をしてもらうことで音の視覚化をするという実験である。教科書では「音の速さは室温1気圧で毎秒340メートル程度である」という1文であるが、実際に実験が行われるとリアリティをもってそれが感じられてくる。頭を使わずとも感性にうったえてくる。見せ方がうまく、教科書のただの1文がコンテンツとして成立する。

「やってみなくちゃわからない」は「やればわかる」という意味であって、さらに何か「わかる」という精神活動は自発的な意味合いが強い。何かがわかるためには努力は必要なくて、その段階に達すれば自然にわかってくる。それは人間の性質なんだろう。本当はどうか知らないが、人はものがわかるということに対して快感を感じるようになってるんではなかろうか。だから人はみんな「わかりたい」と思っている。ただ普通はそこに至る道が苦痛なのだ。
だからこそ、理解に必要な段階をデフォルトで人間に備わっている直感まで下げる、優れたデモンストレーションは有用なのだ。
落としどころは陳腐なものではあるが、重要性を再確認するのも悪くないということで。


追記:番組の制作での裏話については、ページが見つかりません:@niftyにいろいろと書いてある。合わせて読むと勉強になる。かも。

*1:実際はてこに用いられている鉄筋の重さもプラスされているし、車輪をいくつか浮き上がらせれば良いのであるが

*2:「祝!ABU賞・日本賞受賞 記念配信中(12月6日まで)」らしい