Audibleはじめました他

最近良きにつけ悪きにつけ、オーディブルについての話題を目にするようになった気がする。かくいう僕も、12月にAmazonからAudible商品を買ってみたのだ。Audibleは一月あたり1500円の支払いが必要なサービスではあるが、毎月コインと呼ばれる購入権を与えられ、好きな商品をダウンロードできる。要するに毎月一冊、1500円で購入することになる。はじめてダウンロードしたのは「サピエンス全史(上巻)」で、1月のコインでは下巻を買った。
さて、それ出来になるのは耳で聴く本が果たしてどうかという点だろう。よく、日本でAudibleが流行らないのは日本語が聴くよりも目で見るのに適した言語であるからという説を聞く。自分も漠然とそう思っていたが、実際に聞き始めてみると案外集中して聴けることに気づいた。通常の読書の方が定着率はまだ良さそうだが、メリットがその不都合を上回るくらいのところにはある感じ。何が良いかというと、単純に目を使わないで本を読める点。自分は目が疲れやすいのでこれは非常に助かる。電気を消した寝室で聴ける、揺れる電車で本を凝視しないで済む、洗い物や掃除をしながら読書ができる。これはなかなか斬新で気に入っている。

サピエンス全史は、下巻から急激に面白くなった。最近読んだ面白い本は他には、吉田洋一「零の発見」がある。位取り記法がいかに革命的であり、算盤の改良によりその発明に迫りながら長い時間を必要とした不連続な改良であったかということは現代の我々には感じづらい。同じような題材を扱っている「小数と対数の発見」も読み進めているが、やはり非常に興味深い。10進小数の発見に至るまでに、主に貨幣や度量衡の分野において合理的でない多くの進数表記が登場し蔓延った。ヨーロッパ世界に10進小数が伝わったのは12世紀のことであったが(一つの伝達経路はかのフィボナッチだった)、ラヴォアジエの近代化学の夜明け時代に至ってももなお浸透してはいなかった。ラヴォアジエは10進小数表記がいかに化学研究を容易にするか書き残しているが、それがようやく実現されたのは皮肉にも彼が処刑され、メートル法が導入されてからだったらしい。山本氏の科学史に関する著書は多く読んでいるが、一次的、二次的にかかわらない圧倒的な調査量に圧倒される。自分の科学史観が山本氏のものに寄ってきているのを実感する。

小数と対数の発見

小数と対数の発見