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加湿器の電気代のはなし

最近職場の湿度計を見たら、湿度が10%を切っていた。やはり冬は乾燥しているようで、最近なんとなく自宅でも乾燥が気になるので、電気屋さんに行って加湿器を買った。

加湿器には、手軽な価格帯だとスチーム式と超音波式がある。スチーム式は火にかけたやかんのようなもので、水を加熱し、気化させることによって空気中の水分量を増加させる。一方で超音波式では、超音波により水を微粒子化し空気中に拡散させることによって空気中の水分量を増加させる。たとえば、スチーム式と超音波式には次のような製品がある。

スチーム式:

ZOJIRUSHI スチーム式加湿器 EE-RH35-CA

ZOJIRUSHI スチーム式加湿器 EE-RH35-CA

超音波式:

これらの製品を例にとって、性能について比較してみたい。

スチーム式 超音波式
加湿能力 480 mL/h 350 mL/h
消費電力 410W 30W

この表を見ると、加湿能力の差を差っ引いたとしても、超音波式のほうがだいぶ経済的なように見える。消費電力の差が380 Wであり、たとえば一日10時間、30日間使用するとこの差は月あたり114 kWhとなる。電気の単価を20円/kWhとすれば、これは2280円となり、加湿能力の差を考慮しても無視できない。だが、これを見て超音波式のほうがお得と考えるのは早計だろう。下に書く理由のために、実際の使用ではスチーム式と超音波式の電気代の差はそれほど問題にならない。

スチーム式と超音波式の加湿器の大きな違いは、後者では水を蒸発させていないということだ。スチーム式の加湿器が吐き出しているのが水蒸気であるのに対し、超音波式では水の微粒子なのだ。水の微粒子によって湿度を上げるためには、その微粒子を蒸発させる必要がある。水の微粒子がどのように蒸発するかというと、周りから熱を奪うのである。知っての通り、水は蒸発するときに大きな熱を奪う。打ち水の原理と同じであり、プールの水温が気温より低いことの理由でもある。つまり、超音波式の加湿器は使用することによって室温が低下するということになる。

加湿器を使うのは、乾燥した冬の季節だろう。ということは、気温が低下することは多くの場合望ましくない。ではどうするかというと、暖房を使って室温を上げることになる。超音波式を使った場合、スチーム式を使った場合よりも余計に暖房を使用して、室温を保つことになる。したがって光熱費について論じる際に考えるべき項目には、超音波式については「加湿器の電気代+暖房費」ということになる。この暖房費の分は、超音波式とスチーム式の電気代の差とそれほど違わないだろう。大雑把にそのあたりを計算してみたい。
また、1日10時間、30日間使用したと仮定しよう。加湿量を350 mL/hとすると30日間の蒸発量は105 L。水の気化熱を室温でだいたい2.25 MJ/kgとすると*1、30日間では236 MJとなる。これは66 kWhである。加湿能力の差を補正するために、これを480 mL/hに換算すれば、1800円強に相当する。消費電力の差から求めた差額2280円とは少し計算が合わないが、実際の暖房効率や、スチーム式加湿器の熱い蒸気による部屋の暖房効果などを考慮すると、まあ悪い推算じゃないだろう。超音波式の加湿器に有利な材料として、エアコンの暖房効率はヒーターの効率よりも良いということが上げられるかもしれない。加湿によって下がった室温を、暖房効率のよいエアコンで補償すれば、電気代的にはもう少し有利だろう。

もちろん実際の運用に当たっては、衛生面などから必要なケアなどが異なっていたり、水中のミネラル分の析出による粉吹きの問題なども影響してくるので多面的に考える必要があるのだろうが、少なくとも電気代についてはそれほど気にしなくても構わないのじゃないの、というのが結論。