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印象に残った本2014 その①

ブクログにつけた記録によれば、今年は本を68冊読んだらしい。うち9冊がまんが、5冊が雑誌だった。残念ながら全ての本の内容はおぼえておらず、読んだことすら忘れてしまった本も何冊もある。こうなると無い暇をつぶしてしまったように感じられて空しい気分になる。これからは新刊以外は、ある程度評判を聞いてから手を出した方が良いかもしれない。

面白かった本についてはたいてい印象に残ってるけどね。

小説ならガルシア・マルケスの「百年の孤独」が個人的はヒットした。異論の余地はない。マコンドの街の盛衰を描いたものだが、超常的な出来事が怒涛のように叙述される。出来事の一つ一つが、古くから伝わる神話のように荒唐無稽である。マコンドはブエンディア家の繁栄と連動して、何もない土地に打ち立てられた。やがて鉄道が通り、戦争がやってきて、寝ずの祭りがあり、干ばつを迎え、最後には砂嵐の中に消失するのだけど。ここからは完全に個人の感想で、同じことを思う人もいないかと思うのだけど、何もないところから発生して、混沌を経て再び無に帰していく有様というのが、量子論の摂動みたいで面白かった。時空の中で一瞬揺らぎ、やがて消えていく泡のような存在というか。他の人がどう感じるかは興味のあるところだ。
とにかく読後に「すごいものを読んでしまった」と思わず感じてしまう力のある本だった。

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)


前の紹介で異論の余地がないと言ったけれども、ドストエフスキー地下室の手記もまた面白い小説として記憶に残った。面白かったのは、主人公の過剰とも言える自意識のこじらせ具合が、少なからず身に覚えがあったせいかもしれない。彼は周りのから馬鹿だと思われることが怖い。それだけでなく、あらゆる屈辱を受けることに我慢がならない。あまりに自意識が過剰なために、不遇を呪って毎日を鬱屈して過ごしている。もちろんそれは不遇と呼ぶべきものではないのだろうが、もちろん自分は頭は悪くないぞと思っているあたりが、どうしたってナイーブさを感じさせる。彼はまた合理主義に対する敵愾心みたいなものも持っていて、要領よく出世する「やり手タイプ」が許せない。この辺は合理主義が幅を利かせはじめた時代背景にあって理解されるのだと、訳者のあとがきには書いてあったな。この本の後半は若い娼婦との出来事を回想する形式になっている。生身の人間を前にしたとき、頭でっかちな彼の空理空論がどれほど滑稽に映るか、痛々しく描かれていた。
身勝手な理屈をつけて老婆を殺しても良いと結論するラスコーリニコフ、世俗を知らない紅顔のアリョーシャ、インテリぶった饒舌なイワンの嫌なところを煎じ詰めたような主人公の話とも言える。

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)


ノンフィクションだと、音律と音階の科学という本が世界を広げてくれた。これほどのロジックが音律と音階のシステムの背景にあるのかと教えてくれたという意味で、この言い方は大げさではない。
副題は「ドレミ…はどのようにして生まれたか」となっているが、初めこれを見たとき、何を言いたいのかよくわからなかった。「周波数f0の音とその倍音を取ってきたとき、周波数間を等比的に分割したものがドレミ。以上」と単純に思っていたが、背景にはそれで割り切れない理屈と妥協があるのだった。一見最も自然な音律である平均律の根拠となる理屈は、転調の利便と調和性との兼ね合いで決まるというはなし。この本、物理系の教授が書いた音楽理論の本だけあって、ロジカルに書かれているだけではなくて道具立ても物理学のものというのもあって親しみやすかった(?)。ハーモニーの理論では、不協和曲線について詳しく解説されている。2次元にマッピングされた不協和曲面が大活躍する。起伏のある地形図から不協和度を読み取るような頭の使い方は、理系にとっては親しみやすいものだろう。音律と音階は、ふだん意識しなくとも身近なテーマであり、その分世界観に関わる本だった。
実はこのテーマについて、物理学者のヘルムホルツも先駆的な著書を書いているそうだ。現在ではCCに属し、今では原著がarchive.orgのページから入手可能だ。結構なボリュームがあり、内容が古いらしいので自分は読んでないが。

音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)

音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)



ひとまずここまで。他にも山本義隆「熱学思想の史的展開」をようやく通読したり、インタビュー形式の「知の逆転」で本腰の入ったリベラル思想を感じたりとか、印象に残った本はまだあるんですけどね。その②をやる気になったら書きますかね。たぶん書かないでしょうが。