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古典電磁気学のクイズ 答え編

http://yanatsuba.hatenablog.com/entry/2014/03/01/030251

この問題を解くためには鍵がある。というか、本当は問題など何もないのであり、古典電磁気学の問題は純粋に古典電磁気学の範囲内でコンシステントに解かれる。かく言う私も初めは古典電磁気学の適用範囲について吟味がいるのかと思って身構えてしまったのだけど。
さてその鍵とは変位電流である。つまりz=0に描かれた原点を中心とした単位円 Sを貫く電束の時間変化∂D/∂tを考える必要がある。電子がz軸上の位置 (0, 0, z) にいるときの電束の計算は自明である。電子の位置から見た単位円 Sを見込む立体角を考えればよいからだ。ある面を見込む立体角を求めるには、単位球に投影すれば良くて、今回のような単位円Cであれば大学受験の誘導問題によくありそうな簡単な計算で求まる。
さて、δ関数の特異性について注意しなくてはいけないのは電子が z=0 面を通過するその瞬間である。このとき電流密度 \delta (\b{r}-\b{v}t)の面積積分したもの \delta (z-vt)は無限大に発散してしまうからである。しかしこの瞬間、電束密度もまた不連続にジャンプすることに気付かなくてはいけない。つまり、z正方向をCを貫く電束の正方向と定めると、 t\to -0のときD = q/2であり、 t\to +0では-q/2だからである。このときDの時間微分は -qvδ(z-vt)となり*1、Cを貫く電流の特異的な振る舞いをキャンセルする。
実はこれと同様の計算は、Cを境界とする任意の形状の曲面で成立する。丁度ガウスの法則が成り立つのと同じ理由で、複数回表から裏へ、裏から表へ曲面を貫く電束は互いにキャンセルし、qだけのジャンプを持った成分が必ず現れるようになっているのである。


これらの計算は、観測される物理量が連続であるはずという原則からすれば当然である。しかし19世紀の科学において立てられた現象論的な方程式が、電子一つの運動という極めて形而上学的な概念においても整合的というのは驚くべきことのように思う。*2
現象論をなめてはいけない。

*1:δ関数の公式δ( f(x) ) = 1/f'(x)δ(x-x0) (x0はf(x0)=0となる点)を用いた

*2:もちろん近年の工学の発展は単電子の制御という領域に踏み込んでおり、量子的な振る舞いをする電子を観測することもできるようになっているのだが。