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熱力学入門 佐々真一 その3

ブランクが開いたけど読んでいこう.

2.2 物質の熱力学的性質

平衡状態にある流体は,温度Tと体積Vを決めれば圧力Pがユニークに決まる.

前提2.4(状態方程式) 任意の物質A,任意の物質量Nに対して,状態方程式が決定されている

圧力は示強性の量である.示強性であることの定義は,系の密度を保ったままサイズ(V,N)をλ倍にしたとき,不変であるような量を指す.例えば系のサイズをλ倍にしたとき,圧力は一定なので
P(T,V;A,N)=(T,λV;A,λN).
λは任意なので例えばこれを1/Nとすれば,P(T,V;A,N)=P(T,V/N;A,1)となり,Pは温度と粒子密度の関数だけで書ける.

2.2.2 熱容量

これに対して熱容量は与えられた物質量に比例する,示量性の量である.ある系の熱容量は,基準となる系との熱的接触に伴う温度変化の測定により求められる.熱とはエネルギーの移動の形態の一つであるので,熱の移動量はエネルギーに換算し,単位ジュールで定量される.このあたりは次の章で触れられる様子.

熱容量の正値性

定理2.1(熱容量の正値性) 物質の種類と物質量によらず,任意の温度,体積で熱容量C(T,V)は正の値をとる.

教科書中には証明が与えられている.証明は二段階であり,まず定符号関数であることを示し,後に正値性を示している.定符号関数であることの証明は背理法による.温度Tを変数としてC(T)の符号が変化する点を挟んだ範囲[T1,T2]を考える.
 \int_{T1}^{T2} dTC(T)=0 …☆
それぞれ温度T1,T2で同体積の系を考え,熱的に接触させた結果,平衡状態での温度がT*になったとする.前提2.1によりT1<T*<T2である.このとき
 (\int_{T1}^{T*}dT-\int_{T2}^{T*}dT)C(T)
である.一方で,2つの系の間でやり取りする熱の量は,大きさが等しく符号が反対である.つまり
 \int_{T1}^{T*}dTC(T)=-\int_{T2}^{T*}dTC(T)
これを☆と組み合わせると, \int_{T1}^{T*}dTC(T)=\int_{T2}^{T*}C(T)=0である.これは熱の移動が起こるという前提と矛盾である.
ここまでの証明の肝はなんだろうか.ふつうの物質では熱容量は正値関数なので,☆が成り立たない.熱容量が正値ということは,温度が高い系と温度が低い系を接触させた際,熱が温度が高い系から温度が低い系に流れるということを意味している.符号が変化する熱容量を持つ系に熱ΔQを与えると,温度変化ΔTは,ΔQ=C(T)ΔTである.この時系の全エネルギーUはΔQについて単調に増加であるが,ΔQはΔTに関して(したがってTに関して)単調ではない.このことから☆式はUのTに関する非単調性と関係がありそうである.

2.3 熱と仕事

2.3.1 仕事

流体のされる仕事は測定できると仮定する.また仕切り壁の出し入れ操作する際の仕事は無視する.

2.3.2 熱源が与える熱

これから先の議論では,仕切り壁で隔たれた2つの流体に対して,1つの流体から他方の流体に移動する熱を議論の対象にしない

とある.体積変化をともなわない場合は前節で議論してきたように熱容量が決定された.しかしながら,

体積変化をともなう場合には,流体間で移動する熱の定義を与えることは,一般にはできない

とある.これに関してフットノートでは「仕切り壁で隔たれた2つの流体に対して,1つの流体が他方の流体にする仕事が測定できると考えるなら,熱を定義することは可能である.しかし,筆者は,釈然としていない」とある.これまで俺も熱の定義を「エネルギーの変化のうち,仕事による変化ではない分」と定義するものと思っていたが釈然としないらしい.どう釈然としないかは残念ながら触れられていない.ちょっと考えてみよう.

  • 仕切り壁で隔たれた2つの流体に対して,1つの流体が他方の流体にする仕事がそもそも測定できない
  • 仮に仕切り壁で隔たれた2つの流体に対して,1つの流体が他方の流体にする仕事が測定され,定義された熱が,体積変化がない場合に定義された熱と決定的に異なる点がある

のどちらかと想像するが,果たしてどういう意味なのだろうか.本書では熱は熱容量と温度変化をもって定量化された.その論理を採用した理由と関係があるものと思うがぶっちゃけよくわからん.

とりあえずここまで.