電気分極4

前回の記事で登場したBerry曲率というのを説明します。踏み込むと結構大変だと思うので、なるべく簡潔に説明を行うつもりです。
この話をするために、まず量子力学の主人公である波動関数について復習してみたいと思います。波動関数は一般に複素数値をとる関数で、その時間発展はシュレディンガー方程式という線型の方程式に従います。量子力学の枠組みではエネルギーや運動量、位置などといった物理量は演算子として波動関数に作用する演算子として扱われるのでした。また、量子力学の原理の一つとして定数倍された波動関数は元の波動関数と同じ状態に対応するのでした。規格化の問題があるので、ある物理的な(観測地により分類可能な、という意味)状態に対応する波動関数には大きさ1の複素数倍の自由度があります。
この自由度はゲージの自由度に対応していて、例えばランダウゲージとか、対称ゲージとか、そういうゲージのとりかたに依存しているわけです。しかし電磁気学の授業でやったようにこのゲージの選び方は普通は物理には影響しません。もちろん、マクロに位相がそろうBEC超伝導の場合はゲージの対称性が破れているのですが。こうしたものはとりあえずput asideしておきましょう。
シッフやメシアなど、通常学部の授業などで用いられる量子力学の教科書を眺めてみると、このような事情から「波動関数の位相部分というのは意味のないものだ」といった旨のことが書かれているそうです(実際に確認はしてないですが)。しかし、これは実際はあまりに物事を単純化しすぎている。位相が重要な物理というのは古典物理においても存在していたわけです。そうです、波動の干渉です。