6章 古典気体のクラスター展開(3)

大好評の阿部本読みはキュミュラントに対する式を求めるところまで来た.大好評といいつつ誰かが読んでいるとは毛頭思っちゃいないけど.



さて,前回は規約なクラスターと可約なクラスターについて説明をしたのだった.今回はまず,可約なクラスターを考える必要は,実はないのだというところから始める.前回あげた可約なクラスターの例について考える.相互作用が有限距離にしか及ばないものと仮定すれば次の式変形が成り立つ
 \frac{1}{V^{2}}\int \exp (\phi_{14}+\phi_{45}+\phi_{51})\mathrm{d}v_{4}\mathrm{d}v_{5}=\frac{1}{V^{3}}\int \exp(\phi_{14}+\phi_{45}+\phi_{51})\mathrm{d}v_{1}\mathrm{d}v_{4}\mathrm{d}v_{5}
これはすなわち
 \langle \exp (\phi_{12}+\phi_{23}+\phi_{31}+\phi_{14}+\phi_{45}+\phi_{51})\rangle
 = \langle \exp ( \phi_{12}+\phi_{23}+\phi_{31}) \rangle \langle \exp (\phi_{14}+\phi_{45}+\phi_{51})\rangle
を意味する.前節の定理により,このように独立なφを含むキュミュラントはゼロになるので,結局
 \langle \exp (\langle \exp(\phi_{12}+\phi_{23}+\phi_{31}+\phi_{14}+\phi_{45}+\phi_{51})\rangle_{0}=0
となる.以上の議論をまとめると,規約なクラスターのみを考慮すればよいのだということがわかる.


NWをモーメントを用いて簡単にあらわすことを考える.いま,ポテンシャルの到達距離が有限であるという仮定の下,
 \langle \phi_{\alpha}^{\nu_{\alpha}}\phi_{\beta}^{\nu_{\beta}}\cdots \rangle_{c}=\langle \phi_{\alpha}^{\nu_{\alpha}}\phi_{\beta}^{\nu_{\beta}}\cdots \rangle
が1/Vの一次の近似で正しい.したがって,NWをモーメントを用いて表すと
 NW=\sum_{\nu_{1},\cdots ,\nu_{M}}\frac{\langle \phi_{1}^{\nu_{1}}\cdots \phi_{M}^{\nu_{M}} \rangle_{irr}}{\nu_{1}!\nu_{2}!\cdots \nu_{M}!}
となる.ここで,Mは粒子対の総数N(N-1)/2であり,irrは規約なクラスターのモーメントを意味する.また,上の和では \nu_{1}=\nu_{2}=\cdots =\nu_{M}=0なる項を除外する.
さらにWを簡単にあらわす方法を考えていく.一般に,n個の点から出来ているクラスターの,NWへの寄与は N^{n}/n!V^{n-1}=\frac{N\rho^{n-1}}{n!}に比例する.(但し,Nは大きいとした)すると,Wは,
 W=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{\rho^{k}}{(k+1)!}\sum \int \Pi_{k+1\geq i\geq 1}(\frac{\phi_{ij}^{\nu_{ij}}}{\nu_{ij}!})\mathrm{d}v_{2}\cdots \mathrm{d}v_{k+1}
とあらわされる.

(i)1,2,…,k+1のk+1個の点から作られる規約な図形を描き,これに\rho^{k}/(k+1)!を対応させる.
(ii)この図形中のi点とj点との対をとり,その2点間を結ぶφ線の数を \nu_{ij}とし,これに (\phi_{ij})^{\nu_{ij}}/\nu_{ij}!を対応させる.すべての2点の対を考え,上述の項の積を作り,これをx_{1},x_{2},\cdots x_{k+1}について積分する.
(iii)k+1この点を含むすべての可能な図形に対して和をとる

以上が,Wを計算する一般的な規則となる.



これで6.2終わりっ