いま、とある計算をしています。ある結晶構造の中に不純物を入れたときの、伝導率をはじめとする、いろいろな量の計算です。不純物は当然、系の並進対称性を破り、その結果、非摂動のハミルトニアンを対角化していたような基底は、もうすでに摂動ハミルトニアンを対角化するような、良い基底ではなくなってしまいます。しかしここで次のような操作を考えます。つまりこの不純物の位置がランダムであるとして、すべての可能なconfigulationについて、平均操作をしてしまうのです。すると、一見なんとも不思議なことに、この不純物散乱における非対角項が消えてしまう、ということが起こったりします。
しかし、実はこれは物理的に考えればほとんど自明だったりします。不純物をある配置で入れた時これは系の並進対称性を破ることになるのですが、さらにランダムな配置についての平均操作をすることによって、系は再び並進対称性を取り戻すからです。解析力学を学んだ人はわかると思うのですが、並進対称性は運動量の保存を意味しているんで、波数によるindexが再びハミルトニアンを対角化するのです。こういう物理的な考察を入れる議論の仕方は、教科書や論文など、本当にいろんな場面で見かける。たしかにはじめは面食らったりもしたが、慣れてしまえば当たり前に思うようになります。


これを読んだ2年生くらいの学部生はだから、解析力学のごく抽象的な部分も飛ばさずにちゃんと勉強してみてほしい。物理すげえってきっと思うから。